急傾斜地に建つ家

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建築確認の図面と実際が異なる物件

この物件、実は建築確認に付いている図面と実際の状況が大きく違います。
建築確認では、図のような既存よう壁のところまで基礎を伸ばしているのですが、実際には、既存よう壁はもっとももっと下にあります。
そして、基礎の根入れ深さは元の図と変わりません。

傾斜地の建つ住宅といっても、下の図のようなある程度の平坦な部分に建物があり、部分的i傾斜地になっているという建物はよく見かけるのですが、この土地は平坦部分が全く無く、全てが傾斜角45度前後の土地です。

不可思議な申請経緯

この物件は、今の持ち主が買われたときは、築2年の中古住宅で、登記簿にもそのように書かれています。ところが、建築確認の申請は売買の直前に行われています。(築2年後に建築確認を申請) しかも、敷地の前の道路は位置指定道路(道として役所の認可を受けた私道)の手続きも売買の直前に行われています。さらに権利関係は元々の所有者(個人)→T氏(個人)→H社(不動産会社)とややこしい取引関係があります。
では、建てた当時は道路の許可も取っていない無許可建築だったのかという疑問がわいてきます。 中古なのに、売買直前に建築確認を申請し、道路の指定も取るという摩訶不思議な手続き形態。やばいことをしたので、裏口入学でつじつまを合わせたとさえ取れる奇妙な手続きをしています。(このことは買った当事者は、当時、気が付かなかったそうです)

しかし、それでも地目は宅地。実態と違う申請図。奇妙な手続き。

そして当時の土地価格は坪80万円を超えています。

基礎部分の法的位置づけ

その後、基礎部分の鉄筋の非破壊調査などもしましたが、構造図面通りに入れられており、工事そのものに問題はありませんでした。しかし、この部分は、切り土、盛り土をしたのではないので、「宅地造成規制法」には該当しません。さらに何の用途もないですから、あくまでも建物の基礎というだけの扱いです。そのため、厳密には、申請時に構造図も構造計算も不要です。(ちなみに高低差は実に6mもあります)
でも基礎の構造計算は、地耐力と基礎そのものの頑丈さだけが計算されますが、地滑りを起こすかどうかなどは計算のしようもありません。(よう壁は横すべり、転倒などは計算で安全性をチェック出来ます)申請図では、ただ「岩盤」と書かれていますが、今まで崩落していなかったから「岩盤」としたのでしょうか?手前勝手な根拠のない記載です。

計算や計画、基準には全て「前提」がある

福島の原発事故では、地震時に電源が失われると言うことは想定していなかったという問題が指摘されていますが、これは、電源は失われないという「前提」が根底にあったからです。
同様に、このような平坦地もない、しかも傾斜角45度前後という極端な傾斜地に建つ建物が、従来の構造計算だけで大丈夫だとはとても言えないと私は考えます。そもそもこんな傾斜地に建つ建物の設計方法を解説した本すらないでしょう。
計算すれば何でも計算できる。
しかし、その計算は、全てに「前提」というものが存在する。その「前提」を忘れて「計算結果」だけを見てしまうと、人間は大きな過ちを犯しそうな気がします。


計算には全て「前提」がある。
計算を過信し、「前提」を忘れたとき、
事故が起きる。

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