冬の過乾燥に要注意

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この話は、事件ではなく、冬の住まいの教訓のようなお話です。
師走の月が始まったころに一通のお電話をいただきました。
お電話をいただいたのは築1年を経ていない西日本にお住まいの方です。

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乾燥木材を使ったのに、木が鳴る          5-774

経緯

そのお電話は、「夜昼の別なく、ビシッ、バシッといった木が裂ける音がする。構造的に問題がないか心配だから調査して欲しい」という内容でした。
その建物は平屋建ての軸組工法で建てた建物で、何事も業者任せにせず建築主ご自身が細部まで気を使い、構造面にも気をつけ、断熱も次世代省エネルギー仕様(現在の平成28年度基準)で建てるなど、十分に考えられて建てた建物のようでした。木材も乾燥材が最初から使われていました。

早速現地で、耐力壁などに無理な配置がないか、あるいは梁などの太さも問題がないかなど構造的な要素を中心に調査しましたが、原因と考えられるようなものは何も発見出来ませんでした。
つまり、調査をした時点では、何も構造上の不具合を発見出来なかったのです。

写真に見えるのは、そのときのリビングの吹き抜け部分の写真です。吹き抜けといっても平屋建てなので、いわば大天井ですね。

それからも、断続的に木が裂けるような音が続く・・というお電話をいただきました。

う~ん。困った・・・・・原因が分からない!!

…….と、その調査の時の室内の環境を整理して考えると、この方の暖房はすべてエアコンを使っていました。また、一人住まいの方でしたから、多くの人間が出入りしたり活動したりといった人間や調理から水蒸気が発生する事はありません。そのため、どちらかというと過乾燥気味で、ご本人は気づかれていないようなのですが、長くいると喉が少しいがらっぽくなるのを覚えていました。

そして、後日、室内の湿度を測ってもらうと、40%程度で推移しているという話です。

そのあと、室内の湿度を40%を越えるように調整してもらうと、不思議と音鳴りはしなくなったという報告がありました。

この後あちこちの文献を調べまくり、やっと見えてきました。
音なりの犯人が。。。。。。。

過乾燥は木材にも、人間にも大敵。

その犯人は、過乾燥と杉という組み合わせだったのです。

もともと杉という樹種は湿気を吸いやすく、室内の湿度調整に適した材料で、室内に杉板を張ればそれなりの湿気を吸収してくれます。
また、杉材は、通常使われている木材の中でもっとも密度が少なく、密度の変動が激しい材料です。そのため、桐材などと同様に調湿効果が高い反面、伸びたり縮んだりする性質をより多く持っている材料と言えます。

しかも、杉材の場合、乾燥材として流通していても、密度の変化が非常にはげしい材料のため、十分に乾燥されていない木材も出回っているという報告があります。

そして、この家の場合は、構造上の梁にも杉材を使っていました。普通、梁に使う材料は米松などの木が多いのですが、写真のように、梁が室内に表しになるために柔らかな表情の杉を使ったのでしょう。

結局、室内の湿度を上げることで、木材の音鳴りが無くなると言うことは、やはり、木材が乾燥していく過程で、木材の繊維が弾けたり、あるいは裂かれるときに鳴る音だったようです。

これがよく使われている米松のような木材であれば、密度も大きいですから収縮度も少なく、音鳴りにもなりにくいですし、屋根裏にある木材の収縮なら、音も小さかったでしょう。

結局、

  1. 梁の材料に杉という密度の低い、非常に収縮しやすい木材を使っていた。
  2. 室内自体がエアコン暖房で過乾燥気味だった。
  3. それが室内に出ていたため、音が吸音されることもなかった。

という3つの条件が重なったために、夜昼の別なく、ビシッ、バシッという音鳴りが発生したものと思われます。

室内の湿度を上げると音がなくなったという事ですから、そう考えるのが一番自然ですね。。。という結論になって解決することになりました。

まぁ。過乾燥は、木材にも人間にも良くはない・・という事ですね。


グリーン材と言われる未乾燥木材を屋根裏の材料に使い、1年程度の期間、音鳴りがする、というケースはありますが、この場合はほとんど未乾燥材が収縮していっているために起こっています。

しかし、今回は杉の特性から音鳴りがでたためにわかったのですが、もし、よく使われている米松などを使っていれば音鳴りも無い代わりに、いつまでも過乾燥気味ですごされていたのかもしれません。
最近のエアコンなどを中心とした暖房は、やはり加湿器などを上手に利用しないと木材の音鳴りは無くても、室内がいつも乾燥気味で人間の肌やのどにもよくありません。

せっかくよい我が家を建てても、肌があれ、声が枯れ、いつも喉がイガイガした感じ・・・なんてことにならないように。

冬の季節は、ご注意!ご注意!ですよ。

頭で感じるな。体で感じよう!

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