建築条件付の見積の特徴

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建物価格は競合他社で決まる

注文住宅を建てる場合、ローコスト系では坪単価45万円前後で建ち、ハウスメーカーによっては坪75万円が標準価格だといった価格の差がありますが、建築条件付きの建物価格は、注文住宅のように坪単価がハウスメーカーや工務店によって大きく変わると言うことはまずありません。
関東、中部、関西の都市圏では、例外なく坪単価55~60万円前後で推移しています。高性能だけれども、高いと言う建物もなければ、徹底したローコスト仕様でもその代わり安いという建物もありません。
それは、販売自体が他の建売系業者との競争関係にあるために、自社だけが突出した建物を提供出来ないと言う販売側の事情にあります。

つまり、最初に売るべき建物の坪単価があり、そこから他社の仕様を身からべながら、自社の仕様を決めていくという方法で建物のレベルを決めています。この点は、建物の仕様レベルによって坪単価も大きく変わってくる注文住宅とは大きく異なる点です。
そして、他社との競合にある関係上、建物の仕様自体も似たり寄ったりで、販売上その差を強調するために、たとえば「床暖房付き」とか、キッチンの豪華さをアピールしたりしていますが、せいぜい2~30万円前後の範囲のサービスで、それ以外に使われている材料は、各社ほとんど同じようなグレードとなっています。
このように、似たような仕様レベルの建物。それが建築条件付きの建物の特徴です。

標準仕様の実態

他社との競合の中で、建物の坪単価も似たようなものになり、突出した仕様の建物は出ないと説明しましたが、では、一般的にその建物のグレードはどの程度なのかというは、そんなに悪い仕様ではなく、当サイトが行っているサポート・サービスからの統計では、右の図のように中庸な仕様レベルにあります。(具体的には下記(*1)参照)
もっとも、小規模、零細な販売業者になると売ることだけが優先して、木材でも安いが腐りやすい樹種のものを使っていたり、耐震性が基準法ギリギリの低い設計しかしなかったり、断熱性能が著しく低いといった建物の仕様グレードが低い会社もありますが、こればかりは販売価格だけで知ることは出来ませんから、注意が必要です。(*2)

(*1)サポートサービスの事例では、耐震性は概ね等級2を少し下回る程度 。(2X4工法では等級3前後)。耐久性は外壁がサイディングの場合は等級3。モルタルでは等級2。断熱性は等級3(省エネルギー仕様レベル)が多いです。
(*2)木材の仕様や断熱性は仕様書があれば分かりますが、その様なものすら作っていないだらしない売り主もいますし、耐震性に関しては、間取りなどを作成して打合せで聞かないと分からないことがらです。決して、価格表示だけで現れてこない側面です。

標準仕様が最も割安な設定

その会社の販売している土地が気に入ると打合せを進め、間取りなどを決め、仕様を具体的に決めていく段階では、標準のキッチンが気に入らないので、他社に変更したい。サッシを変えたい。といった変更を検討する場合があります。
しかし、建築条件付きの建物では、こういうときは少し注意が必要です。
それは、その会社が標準仕様で設定されている材料や住宅設備は、その会社がもっとも安く仕入れられる商品で設定している場合がほとんどです。そのため、たとえば標準で設定されているキッチンを、他メーカーの同じグレードの物を選んだつもりでも、販売側の仕入れ率が高いために、結果として割高なものになってしまう場合があります。
これは、土地価格は周辺相場から値踏みされやすく、高い価格設定をしても割高感が先に立ち、誰も買ってくれません。しかし、上で説明したように、他社との関係で建物価格も相場があります。そのため、より利益を得るためには、出来る限り自社にとって仕入れ率の安い物を使いたいとする販売側の置かれた状況があるからです。
つまり、変な物は使わないが、出来る限り自社の仕入れ率が安くなるような設定ではじき出されたのが、「標準仕様」であり、「住宅設備」であると考えた方がよいでしょう。

不慣れな工事は割高

時々、高断熱・高気密の建物を建てるのが夢だった、といった形で、標準仕様を大きく踏み出して、仕様を変更しようとする方がいます。この場合も上と同様な問題が起こります。
そもそもこういった建築条件付きの建物を建てる業者は、平均的な、中庸な、万人向きを対象とする建物を建てています。むしろ、そういう建物しか扱ったことがないと考えた方がよいでしょう。これは設計者も同じです。
そのために、たとえば高断熱・高気密といったイレギュラーな建物の設計経験あるいは施工経験はほとんどありません。そして、経験のないことをするとなると、どうしても割高な見積もりになってしまいます。
つまり、注文住宅の業者のように、顧客の要望で家を建ててきた業者と異なり、自分が設定した仕様でずっと建物を建ててきた業者は、標準仕様から大きく違う変更をすると、注文住宅を建てている業者よりもはるかに割高な見積もりとなって出てくる場合が多いですし、邪魔くさいもの(工事や設計作業)は割高な見積もりを出して、お客が断るように仕向ける場合もあります。

割高となる追加見積

また、上のような事例と少し違いますが、小規模、零細な売り主で多いのが、チョットした追加や変更でも、比較的割高な追加費用となる場合があります。
その理由は上と少し似ていて、少しでも利益を上げたい、という理由なのでしょう。
定価のわかっているものが高くなることはあまりありませんが、定価が分からない断熱材の厚み変更や、ペアガラスをLow-Eガラスに変更すると言った場合は、注文住宅だけをしている業者の見積もりと比べて、2~3割程度割高な見積もりを提示してくる場合がよくあります。

このような傾向は、小規模、零細な売り主の販売する土地、建物ほど顕著に表れる傾向です。反対に大手の販売業者では、よく出る追加工事(たとえば小屋裏収納やコンセントの追加)などを最初から一覧表で追加費用が提示してあったり、そういうものが無くても割高な見積もりとなることはまずありません。

そして、このような見積もりを提示してくる理由は、単に利益を上げたい、というだけの理由ではなく、むしろ、「その場所が気に入った」という別の理由で、多少の金銭的な追加費用は飲んでしまう、という買い手側の立場を逆手に取った商法とも言えます。

そのために、売り主は、良い建物ではなく、売れる場所(土地)を探し、買ってくれそうな価格で売るのです・・・それが売り手の基本的な商売のスタンスです。
言い換えると、土地を売りたいが、それだけでは儲けが少ないので建物をセットにして儲ける。
だから会社によっては、建物は付け足し・・という感覚の会社もあります。

定食屋とレストランの違い

今まで説明してきたことを簡単な言葉に置き換えると、注文住宅を専門にしている建築会社は、どちらかというと、単品のメニューや和洋・中華を問わず一応注文を聞いてくれる、いわば総合レストラン。対して建築条件付きの建物を売っている売り主や、その建物を建てている建築会社は、決まったオーダーしか出来ない(それが得意な)定食屋と考えればわかりやすいでしょう。
そのため、定食屋に難しい中華料理の注文をしても割高なのに、味は大したことがないといったギャップが生じやすいのです。(あるいは出来ないと断られる)
好みの間取りで建てられる注文住宅と錯覚しがちですが、あくまでもイージーオーダー。注文住宅と建築条件付きの建物では、このような違いや特性を知ったうえで、うまく立ち回りましょう。

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