人工減少社会と住まい

下のグラフは、1950年から今から30年後の2040年までの日本の総人口を描いたものです。といっても実際の推移ではなく、イメージとしてわかりやすく伝えるために、起点として1950年の総人口8,300万人。日本の総人口のピークである2006年の1億2700万人。そして、2040年の人口の中位推定1億600万人の3点を結んだ曲線です。

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誰も正確に予測し得ない世界

過去に人口が減少していく時代を過ごしてきた人など、誰一人いません。今、誰も想像し得ない世界が始まろうとしています。
ちなみに、これから家を建て、あるいは購入するであろう30代、40代世代は、図で言う黒色の世代です。

  • お爺さんに当たる戦前世代は、戦争という悲惨な経験をしたものの、その後は成長する日本を価値の基軸とした世代です。
  • 次のおおむねお父さんに当たる団塊の世代は、戦後復興、高度経済成長を足がかりに、文字通り「成功した日本」をベースとする価値観を持った世代です。
  • そして今の世代は、右肩上がりの成長や、バブルというものを全くしらない社会で育っています。

不況、閉塞感の正体(人工オーナス期)

日本の15才~65才までのいわゆる就労可能人口の推移を、これもポイントだけを伸ばして作ったグラフを重ねてみました。

調べたのは中小企業庁の統計値で1950年と、就労可能人口が8,000万人を超えた1982年、そしてピークを迎えた1995年、8,000万人を切る2012年、そして将来の中位想定を2040年にプロットしたものをつないだグラフです。

経済用語に「人口ボーナス、人口オーナス」という言葉があります。ほぼ用語として定着し、社会経済情勢の変化のたびに引用されていますが、人工ボーナス期を過ぎた頃から不況感、閉塞感が強くなり、右肩上がりの経済成長は無くなり、しかし、平均寿命の伸びとともに、定年も年金受給の年齢も上がっていきました。

でも、住宅の寿命も延びましたね。住宅性能も上がってきています。

そんな時代の家は何を考えるべきか?

その後、家は誰が所有するのか

これから建てる住まいの寿命は35年以上先まであります。そのとき、人口は大きく減っています。当然住まい手よりも残った家屋が多くなる時代なのだろうと思います。今も空き家がどんどん増えていきます。

リフォームに有利な工法は?

平均寿命が延び、2階の寝室を1階に移すといったリフォームが多くなりました。
住まい方が変わり、間取りを変え、壁をとってしまうような全面リフォームなら、圧倒的に「在来工法」です。

鉄骨プレハブや2X4工法は、そういった壁の位置を変えてしまうほどのリフォームは非常に苦手な工法です。

不動産は利用物か、資産か?

たぶんとしか言いようがありませんが、資産ではなく、利用するという耐久消費財でしょうね。
土地も、便利な場所とそうでない場所は、今よりも著しい価格格差が生じると思います。(35年後は、買い手の方が、少ないのですから)

リビングのあり方

今回の話にあまり関係無いかもしれませんが、『個』を中心に考える家庭は、リビングも小さめ。『家族』を一つの行動単位と考える家庭は、リビングが広め。価値観の多様化とともに、リビングのあり方もさらに変わっていくと思います。
住宅はこうあるべき・・なんて通り一遍の方向性など意識しない方がよい時代になっていると思います。

建物性能と売買の優位性

「長期優良住宅」などの性能がわかる住宅制度が多く利用されています。中古住宅を売るとき、買うときの性能面のアピールがしやすい時代に入るかもしれません。
また、新しい中古住宅の動きとして、中古住宅を全面改築して、耐震補強や断熱補強をした上で販売する会社も現れています。

リフォームならぬ、リノベーション住宅です。マンションでは以前から始まっていましたが、戸建ての中古住宅にも、このような動きが始まっています。

死ぬまで保つ「長持ちする家」を建てよう!

この通りになるのかどうかわかりませんが、人口が減っていくことだけは確かなようです。そしてまた、30年先に「定年」という文字が使われているのかどうかもわかりません。

60才定年制が65才にひきあげられ、年金受給年齢は引き上げられています。
将来は70才ぐらいまでは、どこかの定職に就かざるを得ないでしょう。それは働かざる者食うべからず・・という悲観的な意味合いよりも、人口減少と高齢化の2つで社会がそれを許さないでしよう。(これ以上平均寿命が延びるのかはわかりませんが、減ることは確実にありません)

そんな時代の中で、今描きうる確かな確率としては、35才で家を買えば、30年で65才。その後男性であれば15才程度の余命をもち、女性であればご主人の定年後20年近い老後が待っています。

そして、年金が当てに出来るのだろうか、という切実な問題があります。
考えたくない問題ですし、見通せない問題ですが、視野の片隅に入れておく必要はありそうです。

そうすると、定期収入(給与)の当ての無くなった老後に固定費となる賃貸住宅の負担はやっかいな負担です。だから一生賃貸住宅・・というのは考えものと感じてしまいます。家をもち、仕事を退いたとき、子育ての負担から解放され、住宅ローン(あるいは家賃)を支払う負担から解放されるほど楽なことはありません。

だから、『死ぬまでもつ「長持ちする家」を建てよう!!

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