工事中の損害

工事中の建物や材料等々の保管責任は…

善管注意義務:善良な管理者としての注意義務。生活のいろんな場面で出てくる言葉。

第400条(善管注意義務)
債権の目的が特定物の引渡であるときは、債務者は、その引渡しをするまで、善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。

トラブルがあった場合、善管注意義務あるいは管理者の注意義務等という言葉で実社会では広く用いられている言葉ですが、極めて応用範囲の広い条文です。

工事中の建物や材料の一般的な損害は、民法第400章の規定により、請負者が管理者としての十分な注意義務をもって保管し、あるいは引渡しを行わなければなりません。

そのため、もっとも多い工事請負契約では、次のように書かれています。

住宅金融公庫の工事請負契約の例
第7条(損害の防止等)
請負者は、工事の引渡しまで、自己の費用をもって、契約の目的物、工事材料その他工事施工に関する損害並びに第三者に対する損害の防止に必要な措置をしなければならない。

第9条(一般損害の負担)
工事の引き渡し完成までに契約の目的物又は工事材料その他施行一般に生じた損害は、請負者の負担としそのために工期の延長をしない。

こんなケースではどうなるのでしょうか。

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台風で、材料が水浸しになって、使えなくなった

台風がくるのは事前に十分に予測できます。そのため、材料をカバーをしたりする十分な台風対策を行わずに被害に遭えば、それは善良な管理者としての注意義務を果たしていなかったことになります。破損した材料は、請負者の責任において取り替えるのが当然ですね。(これらは工事保険などでカバーするのが一般的です。-工事業者が加入します)
なお近年は想像を超える自然災害が多くなっています。そういう場合は、一律に善管義務を問うのは困難です。

グラスウールや石膏ボードなど、水に弱い材料が雨で破損した

これらの材料が水に弱く、水に塗れたものは機能が低下することが十分に知っていたにもかかわらず、安易な養生だけで放置し、雨によって破損した場合も、善良な管理者としての注意義務を果たしていなかったことになります。

工事中の建物が放火させられた

窓やドアが施錠できる状態になっていたにもかかわらず、施錠せず工事を終わり、誰かが室内に侵入して放火された場合も、善良な管理者としての注意義務を果たしていなかったことになります。 このとき、火災等不可抗力による損失の負担は注文者、請負者双方が協議して決めるとなっていますが、当然、善良な管理者としての注意義務を果たしていなかった部分に関しては、請負者の責に帰する(負担する)と考えるのが普通です。

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