自己防衛策

経済環境が変化していく時代。展望が見えない時代。
今後は、経営が健全な業者と、足下が揺らぎ始め青息吐息の業者に2分されていく可能性が高くなっています。

材料値上げの価格を消費者に転嫁出来る業者と出来ない業者に分かれ、利益を上げられる業者と赤字が拡大していく業者に別れていく可能性があります。

でも今まで説明したように、業者の優劣を外観と印象だけで判断することは不可能です。その会社のホームページを目をさらのようにして隅々までみていても、そんなことは決して分かりっこありません

何をすべきか。それは消費者が最低限の自己防衛をしておくことに限ります。

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自己防衛1:完成保証制度が使える会社

この制度に入っていることは最低条件 安心度・大

品確法では、全ての新築建物には、主要構造部分や防水に関する部分は、10年の保証が義務づけられています。でも、それは建物を建てた建築会社が倒産してしまえば絵に書いた餅です。倒産した業者の下請けが、ノコノコ来て直してくれるわけではありません。

(財)住宅保証機構や住宅あんしん保証などの保証会社の「住宅完成保証制度」に入っている会社であれば大変安心です。途中で住宅会社が倒産しても完成まで面倒を見てくれます。なぜかというと、会社の財務が安定している会社でないと制度に加入できないからです。
保証会社だってつぶれそうな会社の保証などしませんからね。

つまり、「完成保証制度」に加入できる会社は、早晩、倒産することはないということなのです。

自己防衛2:見積書・図面を揃える

出来ない会社があるんだよ。出来て当然 安心度・中

図面はあなたの注文を現場に行き届くように示すための唯一の資料です。見積書や契約書を見ながら仕事をする人はいません。大工さんも現場監督もすべて図面を見ながら仕事を進めます。そういう意味で図面は注文内容を表す基幹となる部分なのです。

でも一番大事なことは、図面を揃えることではありません。キチンと打合せをしながら図面をつくるというその過程そのものが、実は相手を見定めるちょうど良い時間になるのです。

キチンと図面を書きながら、見積書もキチンとしているのに、突然倒産してしまう会社もなきにしもあらずですが、それよりもいい加減な図面だけで契約を急ぐ会社の方が倒産リスクは遙かに高いのです。(*1)

このとき、早く契約したいと内心で焦っているのは相手です。あなたではないことを肝に銘じておきましょう。あなたが慌てる必要はなにもないのですから、キチンと図面が出来たり、見積書の説明を受け、打合せがまとまった段階で契約をしましょう。

*1 不思議な傾向があり、図面も現場監督もしっかりしているが突然倒産した会社は、現場監督や大工も後のことを比較的気にしてくれますが、図面や見積書もいい加減な会社は社員すら蜘蛛の子を散らすようないなくなり、現場は途方に暮れてしまいます。つまり、前者の会社はお金では息詰まったけれども、社内体制はしっかりしていた。後者はお金でも行き詰まり、会社の中もバラバラだったという傾向があります。 つまり、倒産でも”倒れ方にいろいろ“あるんです。それはひとえに経営陣の人柄です。

そして、それを見抜く事が出来るのは、「いろいろな打合せの過程」なのです。いい加減な社長の下では、社員もいい加減です。しっかりした社長の下では、みんなしっかりしています。社員を見れば社長が分かるのです。

これは、自衛策というよりも、「相手の社風、信頼性、信用度などを知る手がかり」と考えた方が良いでしょう。特に建築条件付きの建物では、要チェックポイントです。

自己防衛3:支払条件

支払い条件にガツガツしていない 安心度・大

倒産リスクを押さえる最大の手段は、支払いが実際に完成している工事よりも多くならないように支払うことですね。

その前に注文住宅の建築主だれもが抱く思いこみがあります。それは、着工時1/3、中間時1/3、完了時1/3の慣習です。でも実態は違います。

分譲住宅はもちろんのこと、建築条件付きなどの土地・建物は例外なく契約時に200~300万円程度の手付け金を支払うだけで、土地代も建物代もすべての残金は引き渡し時の支払いです。

注文住宅で言えば、大手のハウスメーカーなどは以前から、つなぎ融資のいらないように、契約時あるいは着工時点で自己資金だけを支払い、後は完成時に残金を支払う方法も取り入れられています。(すべてのHMということではありません)

つまり、一般的に昔から言われている契約時1/3、中間時1/3、完成時1/3程度に振り分け、つなぎ融資も必要な支払い条件は、必ずしも世間の平均ではないのです。まず、そういう固定観念は取り除きましょう。

■支払い条件は相手の合意の上であればどのような方法でも良い。
■建築条件付きの建物などでは、注文住宅で言う着手金に相当する「手付け金」は、注文住宅の慣習に比べれば極端に少ない 。後は全額完成時である。

後でも述べますが、取引は対等の関係である。と言うことを肝に銘じておくべきでしょう。

一般的な工事の流れと工事の出来高(金額ベース)

それでは、ごく一般的な木造2階建て程度の建物の実際の金額ベースの出来高はどの程度なのでしょうか。
工事費2000万円前後の建物の出来高の目安(工事費ベース)の目安は下表のようになります。(地盤補強工事は含めていません)

工事の時期
基礎完成時上棟直後上棟され、屋根が葺かれた頃(上棟後7日程度)サッシが付き、外壁が張られた頃(上棟から20日程度)壁紙(クロス)を貼る直前
完成割合11%前後30%前後50%前後80%前後90%前後

地盤補強工事は含めていませんが、基礎が完成した時点では、金額的な出来高は全工事費の11%前後。上棟した時は30%程度。そして、上棟してから屋根が葺き終わったときが工事費の半分程度。外壁にサッシが付き、外壁材が張られたときが工事費の8割程度になっています。

こうしてみると、次のような最初は少ない支払いの方法が、倒産リスクだけを考えれば一番安全とも言えます。

契約時10%、上棟直後20%、上棟から2週間後30%、完成時残金

自己防衛4:残工事があると支払いをしない

最終金は建築主の最後の砦。これはあなた自身の責任度・大

残工事と駄目工事。これは、似て非なるものです。
残工事は、本来完成すべき工事が残っているか、途中までしか行われていないもの。工事途中で完成していないものを指します。

駄目工事は、工事は完成したけれども、不具合が生じたため、手直しが必要な工事のことです。代表的なものは、クロスが汚れていたり、建具やフローリングに傷が付いていたり・・と言ったものです。

でも、資金繰りに窮している会社の社長は、いつ残金が回収されるかしか頭にありません。
「もう、工事は終わったんだろう!!、何をモタモタしている。さっさとお金を貰ってこい。早く行け!!」 そう。社長の頭の中は資金繰りで一杯です。こんな人もいます。「後でごちゃごちゃクレームをつけられたらかなわん!!もらうものはさっさともらえ」

世の中、こんな会社ばかりでは決してありません。でも一部の不心得な業者がいることも事実です。倒産と事だけに限らず、金さえもらえば、完成後にドアが開きにくくなっても見に来もしない・・といった業者だっているのですから。

きっちり工事の最後を確認し、駄目工事だけを残し、駄目工事の完成期日も示された上で最後のお金を支払うのが、本来正しい商取引のあり方です。

リスクの点数

不可
リスク度合いリスク小リスク中リスク大
保証会社の保証付き
図面をきっちり書き、説明してくれる。見積書の内容もよく説明してくれる
支払い条件の相談に乗ってくれる

ちょこっとCOLUMN

最大の障壁はあなた自身・・・対等の立場の商取引

多くの日本人、特に交渉慣れしていない人の多くは、
「人によく思われたい」
「非礼なこといって気分を害したら」
「こんな事を言って気を悪くしないだろうか」
「こんな事を言うのは非常識じゃないだろうか」
という心理が先に立ちます。

でもそれは、相手を気遣っているのではなく、ただ、波風(摩擦)を起こしたくないというだけの心理なのかもしれません。

でも、前項の「信用取引」でも説明しているとおり、「工事の出来高」に応じて支払っても、建築会社が不利益を被ることなど一切無いのです。

建ててもらっているのではなく、建てさせてやっているのでもなく、
あくまでも『対等の立場の商取引』という気持ちを持つことが交渉には一番大事でしょう。

もっとも、間取りの打合せも無しに、いきなり支払い条件の話から入れば、誰だって面食らうでしょうし、「こいつは何を考えているんだ~」と思うでしょうね。

何事も、まずはコミュニケーションですよ。

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